2013年8月7日水曜日

ラップで被せを入れるときに何となく気を付けていること

ライブと違い、レコーディングをして音源を録るときは、何度も録って、そのアカペラを同じタイミングで重ねて入れることが出来ます。これを"被せ"と呼んでいます。(本当は何て言うんでしょう。気になります)。

分かりやすく説明しておくと、本線が「スピーカーからデマ吐くぜ 俺はビジー」だとすると、「ビジー」の部分にだけ、別録りで録ったアカペラを被せたりします。

効果的な被せでラップを華やかに

ラップの上手さも勿論大事なのですが、レコーディングした音源で映えるラップをする場合、意外と被せの重要性は大きいです。ということで、被せを録る際に気を付けていることを書いてみようと思います。


左右に振る


被せはパンを左右に振ることが多いです。

パンを左右に振るというのは、要するに被せのアカペラがより右の方や左の方から聴こえるようにするということです。もちろん、本線のラップは普通はド真ん中から聴こえるようにします。

何となく聴いていると違和感も無くて気付かないですが、インストのドラムや上音、ベースなどは、凄く丁寧にパン振りされています。

ラップの被せも左右に振る理由は、
  • ラップの本線と被せがごちゃごちゃとして聴きとりづらくなるのを防ぐ
  • 左右に振っておくことで広がって迫るような迫力がでやすい
以上の2点だと勝手に思っているのですが、とりあえず左右に振った方が良い感じになりやすいです。

さて、どのくらい左右にパンを振るのかですが、これは好みの問題だと思います。
エンジニアの方に訊いた方が良いと思うのですが、被せが少ないとき(2本くらい)は、30~50%で振ることが多いです。

被せを少なくするのは、
  • シンプルにラップを聴かせたい
  • ビートがあまり派手でないのでアカペラが浮いて煩い感じにならないよう合わせて少なくする
  • 被せをたくさん録るのが面倒くさい
ときです。


逆に被せが多いときは、ごちゃごちゃとならないように大きく振ったり、小さく振ったりと細かく振り分けるので、70%くらいまで振ることも多々あります。


また、一つの被せを若干ズラして左右に振ることで、左右の両側から聴こえるような感じにすることができます。(少しズラさないと、相殺されてド真ん中で聴こえるようになります)。

こうする場合は、50~80%くらいの間で、大きく左右に振ることが多いです。



被せの音程


被せの音程というか、声の高さ・張り具合にも色々あります。

僕は、主に
  1. 本線と真逆にする
  2. 本線と揃える
の2パターンで考えています。

本線と真逆にするというのは、たとえば本線が「静かな口調、音程も低めの声」でラップを録った場合、被せは「やや高め、やや声を張ったり叫びがち」にするという感じです。


こちらの客演で参加させて頂いた際のラップでは、そんな感じで被せを入れているので、チェックしてみてもらえればと思います。

逆に、本線が声が高めであれば、被せの声をあえて低めにしてみたりといった感じです。


簡単にまとめておくと

・本線が落ち着いていて低め、被せが張っていて高め
僕は、本線を落ち着いた感じで録って、かつBPMが遅めのときには、最近はこういう風に被せてます。元気がなくて、ノロノロしてて、退屈だなという雰囲気になるのを防げます。

・本線が高めで、被せの声が低め
上記のJet Lifeのフック部分が、こういう感じになってるのでチェックしてみてください。僕は、まだあまり納得いくように出来たことが無いので研究中です。声の細さを補えるのが一番の魅力だと思っています。


逆に本線と揃えた場合は、本線と同じような声の高さで、同じような張り具合、被せの音程を少し小さめにすると、被せが目立ちにくくなり、ラップ全体としてシンプルで洗練された感じが出やすいです。KREVAなんかはこういう感じの被せの入れ方をしている気がします。

被せにだけ音程を付けるとかも何かの曲で試したんですが忘れました!

あと、本線がメロディーの付いたラップの場合は、和音になるような(レに対してファみたいな)被せも勿論ですが、一オクターブ下を入れるのが超お勧めです。是非、一度試してみてください。


被せの位置の正確さ


被せの位置は、当然ぴったり正確なのが良いと思いきや、意外とそうとも限りません。

被せがズレがちだと、本線から浮いて聴こえるので、全体的に良くいえば騒がしくて勢いがある感じ、悪くいえば煩い感じになります。

曲によってはビートが凄く迫力があって、ラップがビートに負けがちになることがあります。
そういうときには、被せをズラしがちにして、ラップにも騒がしさを出したりできます。


ただ、基本的にはピッタリ合っている方が、洗練された感じになります。
被せが録音したアカペラで完璧にピッタリ合ってることは殆どないので、自分で位置をずらしたりします。NOBYさんのミックスについての記事でも触れられています。


被せにエフェクトを掛けるか


A$AP ROCKYなんかは、被せにエフェクトをたくさん掛けていますね。

ピッチをおもいっきり下げてみたり、リバーブをめっちゃ掛けてみたり。

F**kin' Problems
こちらのA$AP ROCKYのバースが分かりやすいです

被せを歪ませてみたりとかも試しています。


掛け声を入れたり、関係ないことを言う


僕は良く「Yeah!」とか「Right!」とか「Swag!」とか「Reezy!」とか入れてます。
アメリカでは「skirrrr↑↑」っていうのが流行ってますね。

海外には自分専用の掛け声があるラッパーが多いです。

これも、入れれば入れるほど、浮いた被せになるので、騒がしさが出やすいです。また、良く考えると当然なのですが、掛け声が入ると勢いが出やすいので、キレの良いラップしてる感が出ます。


結論


被せは、色々なパターンをレコーディングして、試してみて一番耳に馴染むのを選択するうちに、幅が広がっていくと思います。
気持ち悪い被せと、オリジナリティのある被せは紙一重なので、試行錯誤あるのみという感じです!

乱暴にまとめると、ビートに対して、アカペラが負けすぎないよう、煩すぎないよう、丁度良いくらいに。また、BPMが早めであれば勢いのある被せを入れてキレ良く、BPMが遅めであればエフェクトを掛けたりテクニカルにしてノロマにならないようにって感じです。

後は、迷ったら音程を小さめにしておくと良い気がします。

こんな風に被せ入れてるよってのがあれば是非教えてください!