2013年3月3日日曜日

【和訳】 MC漢 インタビュー - 『Murdaration』


フランスのサイトでMC漢の『Murdaration』についてのインタビューがあったので和訳してます。


新作アルバム『Murdaration』は、タフでハードなヒップホップにも関わらず、タワーレコードやディスクユニオンでトップセラーだよね。こういう現象はフランスではもう無くて、今ではメインストリームなヒップホップしかチャートには入らないんだけど、日本でのリアルで生々しいヒップホップの居場所はどこにあるの?

俺のファーストアルバムは7年前にリリースしてて、それから色んなことが変わった。
特に、CDやmp3、新しい音楽のフォーマットといったシットが変化してて、音楽を売るには行動を変えなきゃいけない。
俺は、そういう環境が多くのアーティストに影響を与えてるって知ってるけど、俺には関係なかった。

日本では多くの奴らにとって「ヨーチェケラッ」がヒップホップの全てだけど、ヒップホップを聴いてた層が育って大人になったことで、少しづつ変わってきてる。もうヒップホップは新しいムーヴメントでは無えからよ。実際に、家族や友だちでラップしてる奴がいたって普通だし、政府で働いてる公務員やサツだって、元ラッパーってこともありえる。

そういったことが、日本語ラップが他の音楽ジャンルに比べて凄くアングラなままポピュラーになる唯一の方法だと思うよ。





Murdarationはプロダクション面でも凄くオールドスクールな音に聴こえるね。
どういう風にこのLP製作を進めたの?ファーストではNasのIllmaticをたくさん参照してたけど、あなたの音楽にとってアメリカのヒップホップはどういった立ち位置なのかな?

あぁ、イルマティックなアートワークね。1stはLibra Recordsから出した。

最初は昔のPV(おそらく漢流の極論)に出てくるグレムリンのグラフィティの予定だったんだけど、デザイナーがプランを変えて、俺の幼いころの写真を見つけて、NasのIllmaticみたいにしたんだ。俺はそれが嫌だったから、この件に関しては超揉めたけど、締切も近かったし。でも最終的には話題にもなったし、売上の助けにもなったから、そんなに悪くなかったかもな。

面白いのは、俺は別にNasの大ファンじゃないし、あいつの音楽に関して特別な感情も無い。でもアメリカのヒップホップは、あんまりリリックが分かんないけど、もちろん大好きだぜ。

日本のヒップホップがアメリカのと同じくらい強くてイカしてるようになるのを見たいね。実際に、俺の友だちのTaboo1はフランスのグラフィティクルーL.F.T.に所属してたから、日本のあちこちでメッセージを発信するのに役立ってる。俺の目標は外国人が「マジで日本のヒップホップにはイケてる奴らがいるぜ」って、東京在住の外国人だけじゃないぜ、フランス、アメリカ、イギリス、、、


このMurdarationアルバムは普通の楽曲があって、でも同時にライブ音源、フリースタイル、ビートボックス、、、どうやって、DJ琥珀とアルバム製作を進めたの?




まぁ、フリースタイルについては、ずっと前に京都のフェスティバルで、糞みたいにいっぱいアーティストがいて、俺はステージ裏にいて、それでステージの上でMeteorとIll-Bostinoのフリースタイルバトルをやってたんだよね。俺は自己紹介のために他の奴らとフリースタイルを始めた。Bossと会ったのも、そこが初めてだな。

数年後、あいつが俺を呼んで。覚えてるのは、Bossは携帯も持ってねーから、家の電話で呼びつけやがったんだよな、まぁ日本では普通だけど(笑)。それで、俺のフッドを見たいって言ったから、新大久保のへんに住んでたTabooの家に行って、糞みたいにたくさんブラントを吸ってハイになって、それから、またビデオを取るためにフリースタイルをした。そのビデオからの音源をアルバムのフリースタイルトラックに使ってやった。


漢流の極論のビートは、もしかしたら日本のヒップホップで一番狂気的かも。
数年前にフランスでも流行ったんだけど、このトラックについて、もう少し説明してもらえるかな?

漢:
ビートを作ったのはDJ O-KIだな。あいつは今はビジネスマンでクリーンな会社勤めの仕事をしてる。

日本では、Bボーイは人生について考えなきゃいけない、特に22歳と30歳のときな。
22歳で多くの若い奴らは大学を卒業して新卒社員になる。そこでならなきゃ、次は30がミュージシャンが成功の夢を追う限界、一般人として日本社会で生きる方向に路線変更する最後のチャンスだ。

まぁそれは置いておいて、俺らは渋谷のHarlemでDJ O-KIとイベントをやってて、俺はゲットーなサウンドのラップをしたかったから、ハードな音を作ってくれっていって、いくつかトラックを作ってもらった。漢流の極論のビートを聴いたときは、人生で初めて食らったね。






この曲(漢流の極論)では、「裏歌舞伎町無法地帯、裏切りは命取り」って言ってるよね。
僕たちは、アメリカのゲットーや、ニューヨークのギャング区域のルールはUSヒップホップを通じて知ってるけど、フランス人にとって歌舞伎町の"掟"について知るのは難しいんだよね。
リリックの中でも重要な位置を占める歌舞伎町/新宿について教えてくれる?

俺にとっては歌舞伎町は遊ぶところ。もちろん誰よりも酷い光景を目にしてきたぜ。

世界中どんな地区にだって、良いところと悪いところがあるだろ。俺にとっては、歌舞伎町は見えない街、誰も理解できないし、ストリートの中身を知りつくすことは誰も出来ない。特に最近はね。
俺はみんなが日本のヤクザやチーマーをディスったり嫌ったりするのも分かる。

けど、同時に俺は、そんな世間の目なんて糞食らえっていって、そういった奴らとつるむことが出来る、凄くイケてるな奴らだってたくさん知ってる。それに、この地域にはラッパーやヒップホップ好きがたくさんいる。俺の友だちの一人は対ヤクザの警察になったけど、その前はDJをしてた。一回、そいつの部隊が俺のクルーに遭遇して、そいつは俺のこと明らかに分かってたけど、俺を取り調べなきゃいけなかったこともあったな(笑)。他にも、犯罪に染まった人生を止めて出所後ラップを始めた元殺人犯もいるし。

他の国と一緒だと思うぜ。フランスではどうか分からないけど、日本のメディアはこういうことを話したがらない。


ははは、それで歌舞伎町の話なんだけど、、苦笑

ああ、そうだった。歌舞伎町は俺が子供の頃とはちょっと変わってる。
俺が若い頃は、いつも外で遊んでた、公園とか、路地とか、それで喧嘩があるとこには、いつも顔を出してた(笑)

その頃は、あちこちにチーマーがいたけど、新宿にはあんまりいなくて、渋谷や池袋に溢れてた。
新宿は"大人のビジネス"地区だったからな。だからチーマーはここには居られなかった。

俺らは歌舞伎町で遊べるようになるまで、しばらく待たなきゃいけなかった。歌舞伎町は凄かったぜ。俺は香港で100万ドルの夜景を見たことがあるけど、歌舞伎町は最大の金が流れる地区だった。


で、子どもの頃は、どんな音楽を聴いてたの?

おふくろは、俺がよく近藤雅彦を聴いてたって言ってたな。
でも俺はSyainsっていう1曲しか売れなかったサラリーマンバンドを聴いてたのを覚えてる。
思い返してみると、あいつらのリリックは結構ヒップホップっぽかった。嫌いじゃなかった(笑)
親父は温かくてクールな古き良きアメリカの音を俺に聴かせてた。

でも実際、俺は音楽の中で育ったって訳じゃないし、その頃は音楽なんてどうでもよかった。


で、歌舞伎町を訪れる外国人には何かルールがある?

うーん、バーでは外国人は歓迎してないけど、風俗や他のところでは、ただトラブルを嫌がってるだけかな。もし外国人が、そーいうところにいたら、警察もヤクザも間違いなくやってくるぜ(笑)。ヤクザは多くのクラブを仕切ってるけど、ヒップホップイベントの面倒は見ない。ヤクザもいるけど、何もかも仕切ってるわけじゃない。


それは面白いトピックだね。クラブとヤクザの繋がりについて教えてよ。

うーん、最近の東京じゃ、警察によって因縁つけられて閉店したクラブは数えきれないほどある。でも、大体はすぐにまた開くんだよな。それはヤクザと警察が裏では繋がってるから。結局、金とビジネスの話だよ。

実際、ヒップホップのクラブを開店するのに、警察の知り合い・コネがないとかなりキツいからな。真実は、ヤクザが歌舞伎町の夜を仕切ってるけど、警察も深くビジネスで関わってるってことさ。

東京じゃなくて地方でライブしたって、オーガナイザーはヤクザみたいな奴らばっかだぜ。ダイヤモンド型のシンボルが舞台裏にあったり、水のボトルが特殊な形をしてたり、全部ヤクザが絡んでるイベントってこと。こんなのしょっちゅうある話(笑)。

オーガナイザーもよく「漢さんはまだ"ビジネス"をしてるんですか?」って言ってくるし、俺は「いや、俺はもう音楽で金を稼いでる」って感じで(笑)


もうMSCのリリースは大分聴いてないね。何か予定はある?

今は何も予定は無いな。もうMSCではアルバムは出さないかもしれない。分かんない。

解散したとかじゃねえけど冬眠してるって感じだな。GOは違うことをやってるし、O2は家族がいて沖縄にすんでる。そんで、俺らはインターネットを使って音源をやり取りしてって感じじゃ無いしな。一緒に近くに住んで、フッドでつるんで、同じような刺激を受けて、ラップしなきゃ意味が無い。だから最近はMSCでは何も作って無いんだ。

そんで、これはフランスのインタビューだから言えるんだけど、レーベルの問題もあって、俺らでは正すことが出来てない。それを直すことが出来れば、全てを加速させられる。


DJ KRUSHとも曲をやってたよね。日本のヒップホップアーティストから見て、DJ KRUSHは何をREPしてる?

それは数年前に俺がKRUSHにも言ったことだな。

俺の友達にKRUSHの音楽にマジでハマってる奴がいて、高校のときに、いつも俺に聴かせてきた。俺にとってはウータンクランみたいな感じだったな。凄く暗くて、どんよりしてて、糞生々しい。新鮮だったから、カッコいいねって感じで、でもそんなには聴いてなかったな。嫌いじゃなかったけど、衝撃的って訳でもなかった。KRUSHフリークじゃなかったんだ(笑)。

でも数年後、俺は彼をテレビで見て、「日本のラップを世界中に広めたい。世界中の奴らに聴かせたいから世界ツアーをやってるんだ」みたいなこと言ってて、「おい、KRUSH超かっこいいじゃねえか」みたいな(笑)。

もちろんKRUSHが若いころヤクザだったってことも含めて知ってて、でもインタビューを呼んで、KRUSH最高だぜって思ったね。それで、KRSUHの曲の上でフリースタイルを始めた。それで少しづつ一緒に曲をやるようになって、凄く嬉しかったな。

猛者の最初のバージョンはSONYに却下されて、何でか分かんねえけど。でも俺は最初のやつはあんまし好きでも無かったから。でも後に、KRUSHがリミックス版をLPに入れてて、こっちは超カッコ良かったな。彼と仕事出来て光栄だし、また機会があればやりたいね。





もうひとつ日本文化とヒップホップについて。女子は日本のヒップホップシーンじゃキツい?

俺の意見だけど、結構カッコいいと思うぜ。
実際そんな難しく無い。フィメールのほうがスキルをどう見せたらいいかを突き詰めるのが上手い。ルックスが良ければ、物凄い助けになるしな。成功するかどうかはどんだけビッチになれるかに掛ってる、どんだけヒップホップに真摯か。可愛い子を売り出すのは凄く簡単だけど、本当にスキルがあんのか?

外国のインタビューだから言ってやるよ。俺は妻がいて、彼女は凄く上手いラッパーだった。日本のフィメールラッパーはイケてるぜ。
(なんと!SEEDAが漢君もお父さんになってましたってブログに書いてて、それイメージ的に営業妨害じゃないのwって思いながら読んだ記憶があったんですが、ラッパー同志の結婚だったんですね!)


フランスの人たちに、日本のヒップホップアーティストのオススメを3組教えて。

(しばらく考えた後に)、Swanky SwipeのBes、京都のアナーキー、それからシンゴ西成だな、もちろん。もっとたくさんいるぜ。日本のヒップホップシーンは今めっちゃ面白いからな。


間違いなく面白いね。大きなCDショップでも何処にだって置いてある。
でも東京で本当に良いヒップホップイベントを見つけるのは難しいんじゃない?

そうだな、もっとイケてるヒップホップな場所が見たい。渋谷じゃ特に良いイベントは減ってる。

池袋でも?

そうだな、池袋にはとても思い入れがあるけど、今はもう変わっちまった。
数年前はエグかったぜ。パーティーは満員、喧嘩だらけ、観客の怒りを感じられたし、最高だったな(笑)。でも、そういうイベント、もう殆ど存在してないね。

さらに悲しい話だけど、本当のヒップホップの店もな。昔はもっとたくさん良い店があって、音楽の情熱を共有してたけど、殆ど閉じちまった。ブートストリートも閉まっちゃったんだぜ。

(沈黙)

ああ、楽しくて良いヒップホップの遊び場は少なくなっちまったな、、、。
俺らは絶対に将来このために戦わなくちゃいけない。







以上です。外国のインタビューならではって感じで色々語ってくれてて、おもしろかったです。