2013年7月22日月曜日

アーティストがメディアを持つ意味。ブログのメディア化を始めて思ったこと。

僕は、最近、意図的にブログを多めに書くようにしています。
その理由は、アーティストは自分でメディアを持つべきかもしれないと感じたからです。


以前、JPRAP.COMのインタビューで、HAIIRO DE ROSSI氏が、新しいフリーの形として対談企画を行ってブログに載せているとおっしゃっていましたが、それと似たようなことかもしれません。


メディア化されたブログとは

まず、はじめにメディア化されたブログと、普通のブログの違いについて書いておきます。

簡単に言うと、普通のブログは既に自分を知っている人を対象としていて、メディア化されたブログは自分のことを全然知らない人に幅広くアプローチするということになります。

まず、普通のブログは、ファンやリスナーの方に向けて、アーティストが活動報告やライブ・新曲の告知をしたり、コメントに受け答えしたりすることで、絆を深めるものだと考えています。読む人が自分の曲を聴いている、自分の動きを追っていることが大前提になっています。

一方で、メディア化されたブログというのは、ファンやリスナー以外の、より多くの人に読んでもらうことを目的として書かれています。ですから、その内容には中身・コンテンツが必要になります。自分がアーティストであるということを抜きにしても成り立つとも言えるかもしれません。文字数も増やしています。

インタビューを和訳したり、これまでラップをしてきた経験の中で多くの人に役に立つかもしれないと思うことをブログに書き始めたのは、そのためです。





また、僕は、7月に入ってからSEOと言われているものに初心者ながら取り組んでいます。簡単に言うと、どうすれば検索エンジンからもっとたくさん人が来てくれるかを考えるということです。

従来は、Googleが「多くのウェブサイトからリンクを貼られているほうが上に出る」等の仕様を含んでいたため、SEOの主流は、「相互リンクやブログランキング登録など、どうやってたくさんリンクを集めるか」という、考えるだけでもくだらないものでした。

しかし、今はGoogleの仕様が変わり、基本的には、良いウェブサイトさえ作れば上位に表示されるようになっています。これは、Googleのシステムが成長し、リンク数などに頼らなくても、より正しくにウェブサイトやページの価値を判断できるようになったことが理由です。

僕は、訪問者が、どんなキーワードで検索して、どのページに来てくれているかを確認しています。また、そのキーワード周辺が毎月どのくらい検索されているかを調べています。検索数が多そうで、自分のブログでもGoogleの検索上位に出せそうであれば、記事を書き足したり、過去の関連記事のタイトルを変えたりして、特定のキーワードで検索された際の上位表示を目指しています。

SEOについて詳しく知りたい方は、nanapiを運営しているけんすうさんのブログに分かりやすい解説があります。今のSEOは、良いコンテンツ、どこに何があるか分かりやすいウェブサイト作り、というウェブの基本が評価される良い環境になっているようです。

検索エンジンからの訪問を増やすということを意識し始めたおかげで、以前はほぼツイッターかごごにゃんた氏のブログからしかアクセスが無かったのですが、随分とGoogle、Yahoo!の検索から人が来てくれるようになりました。一方で、今このブログを読んでくれている方の中で、僕の曲を知らない方は、良くも悪くもどんどん増えてきていると思います。

7月以降のGoogle, Yahoo!からの訪問は順調に増えています。



なぜブログをメディア化するのか

ひとつの理由は、ツイッターでの天井がある程度見えたことです。フォロワーの数もだいぶ増えました。良い曲を作れば、フォロワーの方々もツイートしてくださるので、自然と拡散します。一方で、"ツイッター界隈の日本語ラップシーン"の規模も何となく分かってきて、これ以上、ツイッターだけを中心にして活動していくのには限界があるかなと思うようになりました。

勿論ツイッターには多くの人がいるので、"日本語ラップシーン"以外の界隈にも、ツイッターでどんどんアプローチしていくという方法もあるでしょう。ライブ数を増やして、全く違う層にアプローチする方法もあるかもしれません。生放送、フェイスブック等、方法は本当にたくさんあると思いますし、何を選択するかは、本当に人それぞれだと思います。

一方で、SNSの活用やライブを増やせば、その分、薄く広い人付合いが比例して増えていくため、色んな人の目を意識しながら曲を作らないといけなくなると僕は考えました。そうすると、ブログのほうが性に合っているのかなと思っただけで、何を選ぶかは性格次第だと思います。後はまぁバリバリ文章書くラッパーもフレッシュで面白いかなと。

はじめは、リリックに書くべきことまでブログに書いてしまって、余計にリリックが書けなくなるかもしれないとも思いましたが、リリックに書くこととブログに書くことは全然違ったので、今のところ問題無さそうです。その点では、思いついたパンチラインをリリックと奪い合うツイッターのほうが有害かなと思います(笑)。



7月以降にブログを読みに来てくれている方々は、まったく違った層の人たちですし、その方々が僕の曲にも興味を持ってくれるかは、まだ現段階では分かりませんが、一定の方々がフリーダウンロードは落としてくれています。

ツイッターは拡散力や爆発力が魅力ですし、ブログは検索エンジンからの毎月一定数の新規訪問が魅力です。それぞれにも特性があるので、把握しておくと良さそうです。

また、ポートフォリオという考え方もあります。たとえば、ツイッターだけに頼っていると、あるときふと凍結されたりすると発信手段が無くなって絶望することは、DJあおいさんでなくとも目に見えています。複数の発信手段に、複数のリスナーがいると安心感が高いですし、相乗効果も期待できます。


アーティストがメディアを持つ必要はあるか

さて、本来であれば、アーティストは曲を作れば良くて、それを拡散して世の中に伝えるのは雑誌やウェブサイト等のメディアの役割ですよね。

一方で、現状では、Amebreakに誰でも載る訳ではないですし、フリーダウンロードを出しても、数百ダウンロードで止まってしまう場合も多々あるのではないかと思います。

また、リスナーの方が個人運営されているようなサイトではない、規模が大きなメディアほど、「誰も知らないけれど良い曲を作るラッパーを発掘してやろう」というよりも、「人気のラッパーを特集して人気コンテンツを作ろう」という発想に流れていると思います。(読者を増やす効率を考えると当然だとも思いますが)。



根本的な問題としては、そもそも既存のメディアの力がどんどん弱くなっていることだと思います。個人的には、ウェブサイトを運営している方々も、曲を出しているラッパーも、ビートメイカーの方々も、同じくらい大切だと思っているので、JPRAP.COM閉鎖等の寂しいニュースもありますが、是非とも頑張ってほしいです。

さて、既存のメディアが弱くなっている原因は、

(1) 誰でもウェブサイトやブログを書けるようになり、メディアの数が増えたので、競争が激化して、ひとつひとつのパイが小さくなった。

ウェブサイトの数が増えても、一人あたりがウェブサイトを見ている時間は変わりません。ですから、全体のパイは増えませんので、この傾向は、今後どんどん強まると思います。

ウェブサイトを運営する方々のモチベーションは、人それぞれだと思いますが、人がたくさん来てくれれば好きなアーティストを世に広められる、多くの人に対して面白い企画がやりたい、あわよくば広告で収益化、曲は作れないけど有名になりたい、などなど、やはりたくさんの人に来てもらうことがウェブサイトを運営する上で大きなモチベーションなのは間違いないと思います。

(2) アーティストがツイッターで自分で情報を発信するようになった。

そもそも、メディアというのは、新聞の時代から、世の中に知られていない情報を先に手に入れて、発信するから価値があった訳です。これがメディアのコンテンツの魅力だったと思うのですが、最近はアーティストがツイッターで発表する情報が最速です。ですから、メディアは後追い・情報の整理といった面が強くなり、コンテンツとしての魅力が薄まっていると考えられると思います。


という具合に、既存のメディアが弱くなっていますし、アーティストが、そこ頼るだけではなく、自分でメディアを持とうと考えるのもアリかなと思っています。まだツイッター以外は、みんな実験段階だと思いますが。

とは言っても、名前が売れている人や、全く違うファン層を持つ人とfeat.してダウンロード数を増やそうという発想が出てくる時点で、既に純粋なアーティスト・クリエイティブでは無くなっています。どこどこのウェブサイトに取り上げてもらえるように曲を作ろうというのも本末転倒です。それなら割り切って、自分でメディアを持ってしまうのも、逆に曲作りを純粋に保つ方法かもしれません。

デメリットは、間違いなく、アーティスト感が薄れることです。変人風なキャラであればあるほど。
ツイッターが流行る前は、有名なラッパーを天上人のように感じていたのですが、今では全員普通の人間に見えるようになってしまったり。これは時代の流れですから、仕方ないのかなとも思います。


メディアとコンテンツは融合するか

ブログを更新するようになってから、何となく思うようになったのですが、僕みたいにブログをメディア化しようと躍起にならなくても、将来的に、メディアとコンテンツは自然と融合するのかなという気がしました。

rev3.11なんかは、メディアであり、かつ、(プロジェクト単位ですが)アーティストを抱えてコンテンツを作って発表しています。アーティスト側もrev3.11の発信力を借りて名前を売るという関係が成り立っています。今はベンジーさんが本当にヒップホップが好きだからこそ成り立っているモデルですが、実例が積み重なっていけば、広まっていくのではないかと思います。メディア側が単体で魅力的なコンテンツを用意しにくくなっていて、アーティスト側がメディアの発信力を欲している限り、融合は必然な気もしてきます。


具体的には、メディアがアーティストを抱えて、限定で曲をリリースする。アーティストが特定のメディアと提携して、情報を優先して提供する。メディアがイベントを開くとかですかね。すぐには盛んにならないでしょうけれど、進んでいけば、色々おもしろい融合が出てきそうだなと思っています。

Youtubeに動画をあげるのひとつとっても、自分のアカウントであげるか、チャンネル登録者数が多い人に頼んであげてもらうかは、何を目的とするかによって変わってくるかもしれません。


ということで、

あまり上手にまとまらなかったですが、
・広まる/広めてもらえる曲を作るか
・好きなように曲を作って、それを広める手段を自分で考えるか
によって、活動方法は変わってきそうです。

前者を考えている人は多いと思うのですが、意外と後者に関する話って少ないですよね。だからすぐにメジャー・アングラうんたらかんたらの話になるのかもしれませんが、そろそろ次のステップに移れるのではないかと思ったりもしています。本当は、そんなこと考えなくて良いのが一番良いのでしょうけれど。

とはいえ、優先順位は曲ですね。どう広めるかよりも、どう良い曲を作るか。これがやっぱり大事です!笑。


ということで、せっかくなので、新曲貼っておきます。ここまで読んだついでに聞いてみて貰えると嬉しいです!



こちらは今年出す予定の無料ミックステープに入れようかなと考えているのですが、ブログ上部にも過去に出した無料ミックステープがあるので、是非ダウンロードして聞いてみてください。